2007年6月8日金曜日

危険運転致死傷罪

交通人身事故を起こした人には、普通は鉄道事故や労働災害、医療事故の場合と同様に、刑法の業務上過失致死傷罪が適用されてきた。最高懲役は5年だった。今後は自動車運転過失致死傷罪に問われ、最高懲役も7年と重くなる。
 2001年には、刑法に危険運転致死傷罪が設けられた。これに続く交通事故に対する厳罰化だ。
 故意に危険な運転をした者に対する危険運転致死傷罪と違い、前方不注意などが原因で、年間約90万件も起きている人身事故のほとんどに適用される。
 改正のきっかけは、埼玉県川口市で昨年9月、保育園児の列に車が突っ込み、園児4人が死亡、17人が重軽傷を負った事故だ。カセットプレーヤーのテープを替えようとしての脇見運転だった。
 これほど痛ましい事故だったにもかかわらず、地裁判決は業務上過失致死傷罪の上限の懲役5年にとどまった。
 遺族らは最高で懲役20年の危険運転致死傷罪の適用を求めた。しかし、この罪の適用要件は、正常運転が困難なほど飲酒していたとか殊更に赤信号を無視したなど、極めて限定されている。その壁を超えることができなかった。
 裁判長も「危険性や悪質性は際立っているが、法定刑の上限に張り付くほかはない」として、業務上過失致死傷罪の刑が軽すぎることに言及していた。
 遺族などには、懲役を2年引き上げる程度の改正では不十分だとする意見がある。危険運転ではなく不注意運転が原因だとしても、失ったものの大きさを考えれば当然の思いでもあるだろう。

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